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コモ湖畔の書斎から dalla finestra lariana

2014 12 30 アリアーテバジリカ地下礼拝室
多くのロマネスクバジリカ式教会堂では内陣つまり祭壇のあるスペースが身廊より階段10段程,1.5から2mほど高い位置に作られている。祭式を行う神父は一般信者より高い位置で執り行うことになる。それは丁度舞台と客席のような関係にある。そしてその内陣の下にはクリプトと呼ばれる地下礼拝室がある。内陣部分が2階建てになっている。その起源は,地下墳墓,聖遺物室,つまり聖人などを埋葬したり遺物を保管した場所と言われている。ちょっと薄暗く,階段を数段降りて,なんとなく湿度の高いクリプトには特別な空気が淀んでいる。そこは妙に緊密で濃度の濃い空間だ。上の祭壇,内陣が晴れの舞台ならこちらの地下礼拝室は,影の祭壇と呼んでもいいかもしれない。聖遺物の埋蔵所という機能的な意味もあったのは確かだろう。でもそれに加えて,教会はこのような影の空間を兼ね備えることを望まれ続けたという気がする。かつて,キリスト教がまだ公認されずに,それが知れれば命が奪われかねないという危険の中で,隠れて信仰を守っていた時代の遠い記憶が,教会のなかにこのような濃密な空間をつくりだしたのかもしれない。
クリプトは多数のスパン2,3メートルの独立柱で支えられた交差ヴォールトの空間で出来ている。そして必ずと言って良い程,柱はロマネスク様式の装飾的な柱頭を冠している。それは,ギリシャ建築で完成したコリント様式のように洗練されたものではないけれども,石を刻んだ職人の創意工夫と未熟さが見て取れて何とも味わいがある。向こう側の闇の空間,クリプタの中で人間臭いロマネスクの柱頭がこころを和ませる。
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EPSON R-D1 NOKTON40mmf1.4
by kimiyasu-k | 2014-12-30 08:15