コモ湖畔の書斎から dalla finestra lariana

2015 11 28 VENEZIA 18 4本の柱に支えられた小さな家
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EPSON R-D1x NOKTON40mmF1.4
建築の強度設計というのは、かかる力の1.5倍の余力を見ている。つまり想定される力が100Kgとしたら150kgの力まで耐えるように設計がなされる。
だから100本ある杭の内,1本や2本,まあ10本くらいまでは全く用を成さなくても建物は全然へっちゃらというのが、現実だ。
なので,おそらく旭化成工業だけではなく、ほとんどの杭打ち業者が同じようなことをやっている(と、思う。)どうせ、何も起こらないし,最大荷重が想定荷重の1.5倍もあるような大きな地震が建物の寿命の内に来ることは先ず無いし,よしんばそんな地震が来て建物が倒壊してもそれが杭の不備のためだなどという原因を突き止めることはできないから、責任をとる必要もない。だから、今回の杭のデーターコピペ事件も、数多くある杭の内,わずか数本だけだから構造的にそれほど問題が生ずるとは思えない。偶然,運悪く不同沈下が起きてしまい,二つの建物にずれが生じてしまっただけで,むしろそのために建物というのはエクスパンションジョイントと呼ばれるズレによる力が他の建物に伝わらないような仕組みを工夫している。(もちろんここまでの話しは構造力学的には随分乱暴な議論であるし、本当はこんな単純なものではない。おそらくこれから数多くある偽装建物の解析を行う事で,「数本の杭は支持層に届いていないけど全体では安心ですよ」という評価がされるはずだ。)
建築はもう数千年前から人が「経験的」に築き上げてきた技術であってコンピューターのように「理論的」にできた技術ではないから、そんな理想的なものではない。
例えば木造住宅の耐震性だって、一応,基準があって耐震壁,地震に耐えるための壁の必要量が法律によって規定されているけれども、家を一軒一軒,どんな力がかかるか解析して、実際どこまで耐震性があるのか評価して作られている訳ではない。言ってみれば、まあ,この程度、壁を入れておけば,この震度の地震には耐えられるだろう,というそんなものだ。大体現場の仕事などは大工の腕にもよるし,木という素材自体自然の素材で決して均質ではないし,ひょっとして極端に脆弱な部分があるかも知れない。でも、そういうことも含めて,この1.5倍という安全率の中で許容されるという訳だ。
なので、今回の杭事件でもし自分の住んでいるマンションは大丈夫だろうかと心配する人がいたら心配する必要は無い,とほとんど自信を持って言う事ができる。
だから、今回の杭事件は騒ぐ必要も無いし,ましてや責任を取る必要もない、などという事が言いたいわけではない。
大手不動産会社,大手ゼネコン,大手杭打ち業者,下請け,でも最後に作業するのは結局はひとりの人間,ということであって、このひとりの人間の顔を全く知らないのに「大手」というだけでまるで全面的な信頼をおいてしまうのはどこかおかしい。建築は車やスマホと違って,どんなものでも結局は現場で、それぞれ個性をもった人間が手作りで作るものだ。当然,車を買うのとは全く違った「態度」でのぞまないといけない。
そう言えば,ヴェネチアの街は,全く科学的なデーターの無い無数と言ってよいほどの木の地中(海中)杭の上に築かれている。


















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by kimiyasu-k | 2015-11-29 07:25 | Comments(0)