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コモ湖畔の書斎から dalla finestra lariana

2016 03 02 とびきり美味しい子豚料理
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EPSON R-D1 NOKTON40mmF1.4
久しぶりにミラノに住む高浜さんのお宅に招待された。高浜さんはもうミラノに40年以上住まれていてそろそろ引退をしたいと思っていたのだけれども,どうも本社の方からあとしばらく働いてくれないかと頼まれ,まだ現役として頑張っている。けれどもお歳だけの事はあり,最近は体のあちこちが痛くなったり,視力も弱くなってしまって,仕事が大変だと時々もらしていた。
高浜さんは料理が好きで,招待されるとどんな料理を食べさせてくれるか楽しみだ。今回も期待のどおり飛び切り美味しい肉料理が待っていた。maialino da latte,乳飲み子豚とイタリアでは言い,ちょっと残酷だけれどもまだ乳しか飲んでいない子豚の料理だ。ただでさえ柔らかなこの子豚の肉を,まるで口に入れると溶けてしまうのでは無いかと思う程柔らかく煮込んでいる。そこで食事の時にその秘密を教えてもらった。どんなに工夫をしてもこんな風に子豚の肉はならないはずだから。すると高浜さんは,台所に行き,随分年季の入ったひとつの鍋を持って来た。ちょっと目にはなんら変哲の無い普通のステンレス鍋のようだけれどもその鍋にはしっかりと閉まる蓋が付いていた。どうも大きなノブを回すとこの蓋が鍋を密閉するようになっているらしい。そう,これ,日本から持って来た古い圧力鍋,もう40年も前のものだけれども今のと違って随分分厚いステンレスでできてるから,まるで鋳物の鍋で長時間煮込んだように,おいしくできるんだと,自慢げに見せてくれた。 そして秘密は,煮る時にこの鍋にローズマリーの葉とこのカルリのオリーブ油をたっぷり入れる事だ言う。カルリのオリーブ油はお店では買う事ができない。カルリは1921年からのオリーブ油の老舗で,限られた生産量のために会員に宅配でしか販売しておらずなかな手に入れる事ができない。そして,こんな古い圧力鍋は見た事がなかったから,手に取ってじっくり見せてもらった。
ふと,気が付いた。あれ,この圧力鍋,安全弁が付いていない。これじゃあ,火加減でしか中の圧力調整できないから,随分使うのむずかしいし,危ないじゃないの,爆発しかねないぞと,思った。そこで高浜さんに,これ安全弁付いてないけど大丈夫なんですか,と聞くと,高浜さんは,大丈夫大丈夫,火加減は良く知っているし。それでもやっぱり何か怖い気がするから私は,高浜さんに,これイタリアではきっと,法律で使うのを禁止されているんじゃないですか。と言った。高浜さんは今度,この鍋に手をいれて,安全弁も取り付けるようにするつもりだから。と言う。いくら美味しい肉料理ができるとはいえ,やっぱり安全弁のない圧力鍋をそのまま使い続けるのは良く無いので,わたしは高浜さんに,とても美味しい料理ができるけどやっぱりもしもの時に備えて異常に高い圧力がかかったとき圧力が抜ける安全弁を取り付けてから使ったほうが良いと思います,と言った。高浜さんは,本当は分かってはいるんだけど,随分お金が掛かるみたいで,それならいっそ,新しい圧力鍋を買ったほうが安いけどやっぱりこいつは特別美味しい料理が出来るので,このまましばらくは内緒で使おうと思っているんだと言った。
今度はいつの事か分からないけど,私は高浜さんに,この次はこの鍋使わない,オーブンを使った料理を食べさせてくださいね,と頼んでおいた。
高浜さんのご両親は随分,変わった方だったようで,高浜さんは名前を原発さんと言う。















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by kimiyasu-k | 2016-03-03 06:18