コモ湖畔の書斎から dalla finestra lariana

2015 08 04 クレッジョの洗礼堂 合理的思考の先にある形態
d0104210_439731.jpg
EPSON R-D1xNOKTON40mmF1.4
今となっては黄色とピンクの建物の間に窮屈そうに建つクレッジョの洗礼堂は、5世紀頃に建てられたそれに先立つ洗礼堂が、おそらく地震によって崩壊してしまった後,1122年から1144年の,ノバラ司教であるリティフレッドの時代に建てられた。
洗礼堂の数多くの例にもれず、このクレッジョのものは八角形プランに,4つの内陣が付属したプランで外観を見れば,その形はすぐに理解できるのだけれども、平面図だけをみれば中心の大きな八角形のボリュームが見えないために、あたかも角の丸くなった4角形プランででもあるかのような印象を受ける。
洗礼堂は,当時の人々にとっては決定的に重要な儀式,つまり、キリスト教徒になる、つまり「人」になるための儀式を行う場所だったのだから強い象徴性が必要だった。教会の本体がミサを行うためのに機能的な、バジリカ形式,つまり正面に祭壇があり、身廊に多くの信者がそちらを向いて並ぶため、という機能的なものであったのに対して,洗礼堂は,キリスト教という一つの世界を表現するための建物でなければならなかった故に,円形や8角形という、宇宙を表現する完全な幾何学が採用された。そこでは、洗礼という儀式を執り行うための機能的な要望は、二次的なものと考えられた。
科学的思考、合理的思考が正しいと思い込んでいる今日となっては、こうした形態の持つ象徴性の重要性は,理解しがたい。この八角形の中に,言ってみれば世界、宇宙そのものが凝縮されている。建築はそういう役割を担っていたし、洗礼堂に限らず,建築という行為はそのようなものであった。
[PR]
by kimiyasu-k | 2015-08-04 06:19